調理場という戦場 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論

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「我が身を任すことのできるところはどこだろう?」  そう言うと芸者さんのようですが、そういう問いかけは、常にしていかなければならない。いいオーナーか? いい料理長か? 自分の場所は自分で選んで、思いやりのある人の下で働かないと、料理人はほんとうに危ないですよ。毎日の習慣が手にすり込まれていく職業なのだから。 — location: 635


いい人なだけではないということを身体から発するためには、勤勉なだけではだめだった。のべつまくなしに働く甘さではなく、必要な時に必要な力を出せることが大切なのだと痛感していました。バネが必要でした。  愚鈍なだけだと、 徹頭徹尾、使い走りで終わらされてしまう。だから、愚鈍と利発のあいだを行く 術 というか、そういったものがぼくには必要だった。 — location: 669


一生懸命に仕事をやっている人には、一生懸命な人の言葉しか通じないのです。当人も毎日必死にやっているのだから、具体的にきちんと考えている人の提案しか採用するはずがない。中途半端な「言うだけなら、誰だってできる」という程度の意見ならば、自分で考えたことを押し通すほうが結果がよくなるのですから。 — location: 767


そっくりそのまま仕事に映し出されると知りました。  大切なのは、簡潔であり、清潔であり、人間性があるということです。 「整理整頓がなされていることは、仕事がきちんとなされるための基本なのだ」ということが、このお店に来てよくわかった。乱雑な厨房からは、乱雑な料理しか生まれない。大声でわめきたてる厨房からは、端正な料理は生まれない。  最初は掃除の回数が多いことに驚きました。仕事が一段落したら、いつも掃除をしているのです。 「誰かが作業中だからその人は抜かす」ということはありません。必ず全員で掃除をする。  ほうきで掃き出すことも、掃除機で吸い込むこともない。  床の汚れもどこの汚れも、いつもぞうきんで拭き取っていました。一〇枚ぐらいのぞうきんを常に洗ってゆすいで汚れているところに投げる人がいる。そして各セクションの持ち場にいる人たちですべての汚れを拭き取るのです。これを全員でやっているのです。落ちているものをなくすまで、掃除は続きます。 — location: 901